カヌーの作り方
自作カヌーといってもいろいろな作り方がありますが、ここでは細長い板(ストリプ材)を貼り合わせてつくるストリププランキング工法について簡単に説明します。
ストリププランキング工法は美しい曲面を出すことができるので人気のある作り方です。
このページではカヌー作りの全体の流れを知っていただくために細かい説明は大幅に省いています。
当店で販売している設計図セットには詳しい説明書(日本語ガイド付き)が付いています。
1.準備
●設計図
すべては設計図から始まります。
よいボートを作るためにははよい設計図から。これが基本です。デザインがよくなければいくら丁寧に作っても美しいカヌーは手にできません。
まずはよい設計図を入手してください。当店では、トラディショナルからモダンスタイルまでの多くの設計図を扱っていますのできっとお気に入りが見つかるはずです。
ストロングバック、モールド・・・ ストロングバックとは、カヌーを製作するための台のことです。モールドとは、型となる板のことです。これらの材料は厚さ12ミリ程度の合板で十分です。
ストリプ材・・・ ストリプ材とは船体の材料となる細長い板です。サイズが特殊なためホームセンターなどでは手に入りません。できたものを買うか、腕に自信のあるかたなら自分で作ることも可能です。
トリム材・・・ ステム、ガンネル、デッキ、シート、スウォートなどをまとめてトリム材といいます。これもほしいサイズのものはホームセンターなどでは簡単には手に入らないでしょう。できたものを買うか、腕に自信のあるかたなら自分で作ることも可能です。
FRP資材・・・ カヌーは強度を出すためと防水のために最後にFRPコーティングを行います。ファイバーグラスクロス、エポキシ樹脂などが必要となります。あと、作業に必要な刷毛やスクイージーなどといった道具も必要となります。
●道具類
特別な道具は必要ありません。日曜大工程度の道具でも十分にカヌー作りはできます。
のこぎり、金づち、かんな、ナイフ、のみ、ジグソー(モールドの曲線切りに使用)などが必要です。
ただし、ストリプ材を自作するのであれば専用の刃物やルーターやトリマーといった特別な工具も必要になります。
当店ではカヌー製作に必要な工具類も取り扱っています。
接着剤も必要です。ストリプ材の接着には扱いやすい水性のものがおすすめです。トリム材の接着にはエポキシ系がおすすめです。
木部やFRPの保護のための塗料も必要です。
2.ストロングバックとモールドの準備
「ストロングバック」とはカヌーを製作するための台のことです。
材料は12mm厚の合板でも十分でしょう。説明書の指示どうりに正確に組み立ててまっすぐになるように設置します。
「モールド」とはカヌーの船体の型板のことです。材料はやはり12mm厚の合板で十分でしょう。図面を元にモールドを作ります。当店の図面は実寸大なので、カーボン紙を敷いて上からなぞるだけで型を写すことができます。とても簡単です。
型を写したら切断します。曲線なのでジグソーが必要になります。
全てのモールドが切断できたら、説明書の指示どうりにストロングバック上に設置します。
3.ステムの準備
「ステム」とはカヌーの先端の部材のことをいいます。カヌーの先端を保護する重要な部材です。この部材を別に作ります。
曲げ作業が必要です。何枚かの薄板を曲げてから接着してステムを作ります。
ステムは内側と外側の2重構造になっていてます。内側のステムをはじめに取り付けてからプランキングをおこない、外側のステムはプランキングの後に取り付けます。
ステムが出来上がったら、内側のステムをモールドに仮止めします。
内側のステム材にはストリプ材を接着していきます。ストリプ材がぴったり密着するようにステムを削っておきます。
4.プランキング
いよいよプランキングを始めます。
下側からプランキングを始めます。始めの1本で今後のストリプ材のカーブが全て決まってしまうので慎重に。自然な美しいカーブを目指そう。
ストリプ材はステープルあるいは細い釘でモールドに止めていきます。
両サイドの最初の1本が決まればあとは単純な作業の繰り返しです。ステムとの接着面とストリプ材に接着剤を塗って次々にプランキングしていきます。ストリプ材同士ができるだけ段差ができないようにするのが美しく仕上げるコツです。
ステムの上の端まで進んだら、一方のプランキングはストップし、片側だけセンターを越えるようにプランキングしてしまいます。
接着剤が乾いたらセンターラインを直線に切ります。
あとは半月状に残った部分をプランキングして埋めていきます。
先端部の反りあがった部分も短いストリプ材でプランキングします。
プランキングが終わったら外側のステム材を取り付けます。そのあとで削って形を整えます。
全てのステープルを抜き取ります。
外側を研磨して滑らかにします。
※ストリプ材はプランキングしやすいようにエッジを加工したもの(ビード&コーブタイプが主流)を使うとプランキングが非常に楽かつきれいに仕上がります。
5.FRPコーティング
まずは外側のFRPコーティングを行います。
ファイバーグラスクロスとエポキシ樹脂を使ってコーティングします。
FRPコーティングの細かい手順については省略します。
(写真左)スクイージーでエポキシを均一にする
(写真右)3回のエポキシコーティングが終わったところ
外側のコーティングが完全に硬化したら船体をモールドから外します。
研磨して表面を滑らかにします。
内側も外側と基本的に同じです。ファイバーグラスクロスとエポキシ樹脂を使ってコーティングします。
6.ガンネル、デッキ、スォート、シートの作成と取り付け
・スウォート
スウォートは船体の両側をつなぐ補強材のことです。また、運搬する際の持ち手にもなります。
内側ガンネルにボルトで取り付けます。
・シート
シートについても大きさやデザインは好みでいいでしょう。
シートの取り付けは、内側ガンネルからステーを介してボルトで吊るすようにするのが一般的な方法です。
7.仕上げ
ガンネル、デッキ、スウォート、シートなどのむき出しになっている木部にはニスなどで塗装します。シートなどは取り付ける前に塗装しておいてもよいでしょう。塗装することで防水性や耐久性を増すことができます。
エポキシ樹脂などのFRPは紫外線で劣化してしまいます。美しい状態を長く保つためには、紫外線吸収剤を含んだ塗料で塗装することをおすすめします。できれば専用のマリン用塗料がよいでしょう。